#98 猛暑と観光のいま
HIGHLIGHT
涼しい夏は戻らないかもしれない
昨年に続き、熱波が世界を襲っている。研究によると、アジアの多くの地域では先月、壊滅的な熱波に見舞われ、気候変動により気温が少なくとも2度上昇したという。この研究では、気候変動により熱波が発生する可能性が30倍になったことも判明した。
インド、バングラデシュ、タイ、ラオスではいずれも4月に最高45度という高気温を記録し、これにより一部の国で死者が発生し、道路が溶け、多くの人が病院に搬送された。
現在、アジアに限らず世界中で異常な気温を記録しており、熱波、または数日間続く暑さや暑さは、熱関連死亡の増加など、社会に大きな影響を与えている。熱波は自然災害の中で最も危険なものの一つとされるが、その死者数や破壊が必ずしもすぐに明らかになるわけではないため、現在に至るまでそれほど危惧されてこなかった。WHOによると、1998年から2017年にかけて、熱波により16万6千人以上が死亡し、その半分以上が2003年のヨーロッパ熱波で亡くなっている。
気候変動により、熱にさらされる人口が増加しており、今年の夏も注意が必要になるだろう。
夏は旅行シーズンでもあり、観光地は熱波の影響を受けてさまざまな対応を迫られている。ヨーロッパでは、イタリアでは先月史上高気温の観測が予想されたため、保健省はローマ、ボローニャ、フィレンツェを含む16都市に非常警報を発令した。ギリシャ有数の観光名所、アテネのアクロポリスは3日連続で最も暑い時間帯に閉鎖された。灼熱の夏が一般的なイラクでも、チグリス川が縮小し、地元住民の娯楽を奪っているという。
気温が上昇し続ける中、私たちの夏休みはどのように変化を遂げるだろうか?今回は熱波が及ぼす観光への影響を地域ごとに取り上げていく。
👉 Record heat waves sweep the world, from U.S. to Japan via Europe (The Japan Times)
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旅行者の安全を守るために
この夏、イタリア・ギリシャ・スペインなどの南ヨーロッパは40℃を超える猛暑に見舞われ、観光客が倒れる被害も報告されている。The Guardian の記事によると、旅費が高騰している背景もあるが、デンマークなど北ヨーロッパへの人気が高まりを見せているという。そんな中、ローマの地元当局は、ナゾーネと呼ばれる水飲み場を見つけることのできるアプリの使用を推奨し、観光客への安全を呼びかけている。
👉 Tourists and locals struggle as heatwave grips Italy (CGTN)
暑さのワールドレコードを求めて
アメリカでもっとも暑い「デスバレー国立公園」への観光客が増加している。1913年にデスバレーで記録された「56.7℃」という世界記録を超える瞬間を体験しようと、多くの旅行者が集まっているのだ。一方、スマホの電波は公園の大部分で入らず、暑さで車が故障するケースもあるという。大自然という環境だからこそ、旅行者1人ひとりの十分な備えが大切になる。
👉 Extreme heat tourism in Death Valley: ‘It’s too much, it’s just unbearable!’ (EL PAIS)
ラオスを襲う熱波
ラオスは今年、記録的な熱波に見舞われており、ルアンパバーンでは5月に観測史上最高となる43.5℃を記録した。中でも、国内総生産の12%以上を占める観光業は大打撃を受け、観光客数が大幅に減少する事が予想されている。しかし、こうした深刻にも関わらず、ラオスでは対策となる都市計画がなされていない。観光業を救うためにも、熱波への包括的な適応が必要となるだろう。
👉 Heat wave blasts Southeast Asia – a likely pattern for the future (RADIO FREE ASIA)
アフリカ観光とオーバーツーリズムへの備え
アフリカは温暖化の影響を受ける一方、普段とは異なる気候や自然、文化を体験したい旅行者にとって人気の選択肢となっている。とはいえ、サハラ以南のアフリカでは、警報や対策システムが追いついていない状況もある。気候変動の影響をもっとも受ける地域であるからこそ、今後はオーバーツーリズムへの対策の重要性を増していくだろう。
👉 AFRICA’S TOURISM BOOMS AMIDST EUROPE’S SWELTERING HEATWAVES (VENTURES)
南極観光が地域を脅かす
2022~23年にかけて、10万人以上が観光目的で南極を訪れ、その数字は上昇を続けているようだ。そんな中、南極観光における船の利用による環境汚染が問題となっている。研究によると、南極観光船の排気ガスにより、南極半島の一部では、毎年夏に最大23mmの地表雪が溶ける可能性があるという。これを受け、国際南極ツアーオペレーター協会(IAATO)は、観光客の制限や収益の一部を対策に充てるなどして環境保全する事を検討している。
👉 Antarctic tourism is booming – but can the continent cope? (The Guardian)