#24 私たちにできる脱炭素への取り組み - scanning newsletter
scanningは、コンシューマーカルチャーの視点から「環境・社会・ヒト」の未来を考察するニュースレターです。今週は「世界の炭素排出削減への取り組み (家庭) 」に着目してお届けします🏠
THIS WEEK’S TOPICS
👣 気候変動対策への国内ギャップ
🍳 知ることから始める脱炭素への取り組み
🚮 ゴミの再定義
🛍 ブラックフライデーの功罪
👂 耳あたりの良い言葉にご用心
HIGHLIGHT
気候変動対策への国内ギャップ
COP26の開催に合わせて、アメリカやイギリスなど欧米を中心とした10カ国の人々を対象に、気候危機に関する調査が行われた。
その中の「政府や企業、メディアと比較し、自身の温暖化対策への活動はどう評価できるか」という質問に対して、約36%の人が「非常に熱心である」と回答している。一方、メディアにも同じような評価をした人は21%、地方自治体は19%、国は17%、大企業は13%と、自身の取り組みをあらゆる機関よりも高く評価していることがわかる。
この回答結果は、彼らの気候変動対策に対する考えの中核となっている。46%の人は「自分の生活習慣を変える必要はない」と回答しており、1番多かった理由として「現在自分が行なっている活動に誇りを感じている」というのが挙げられる。もちろん、中には本当に取り組んでいる人も多くいるだろうが、「自動車よりも公共交通機関を優先する」「環境を無視した製品に課金する」といった生活に直結する対策を優先的に考えている人は25%以下と、実際の行動には疑問が残る結果となった。
とはいえ、この調査結果から「気候変動に対して、政府や企業、国民の役割を明確にする必要がある」ということが明らかになったのは大きな収穫だ。
👉Few willing to change lifestyle to save the planet, climate survey finds (The Guardian)
OPINION
知ることから始める脱炭素への取り組み
👉We need to talk about your gas stove, your health and climate change (npr)
アメリカは、2035年までに電力部門の脱炭素化を実現するため、クリーンな発電所やオール電化住宅への投資を推し進めている。そんな中、家庭における電力の争点となっているのが、35%の人々が使用している「ガスコンロ」だ。バイデン政権も電気コンロへの切り替えを促進するため、政府からのインセンティブを検討している。
一方、このままでは存続が危ぶまれるガス事業者は、「ガスコンロを使った料理は安くて美味しい」というメッセージを伝えるキャンペーンに投資し続けている。
アメリカで最も歴史のある環境保護団体 Sierra Club はこの問題に対し、「健康被害への懸念」という軸からガスコンロを削減し、「結果として温暖化対策に繋げる」というアプローチを講じている。ガスコンロを使用することで発生する二酸化窒素 (NO2) は、低濃度でも喘息患者や子どもが呼吸器疾患になる可能性があるという。この内容をアニメーション動画にした「Gas-free homes: a win for our climate, health, and safety」は、YouTubeで36万回以上再生されている。
とはいえ、このようにメリット・デメリットという対立した声明が飛び交う状況では、わたしたちが起こすべきアクションを正しく判断するのは難しい。信頼できる機関からの情報を取得することはもちろん、自ら情報にアクセスし現状を知るという活動は、変化が求められるこの時代に重要だ。
(Ryo)
ゴミの再定義
👉FROM TRASH TO TREASURE: SWEDEN’S RECYCLING REVOLUTION (BLUE OCEAN)
スウェーデンで一人暮らしをする中で、自分の生活における消費と向き合うことが多くなった。スウェーデンでは、容器を綺麗に洗って乾燥させたり、生ゴミは街の指定の紙袋に捨てるなど、かなり分別が細かい。綺麗に洗ったゴミを紙袋にまとめて、ゴミ回収場で直接分別するため、ゴミ袋を使うことがない。そのため、具体的にどんなゴミがどの程度出るのか、プラスチックや生ゴミはどのくらいの割合なのかなど、ゴミの詳細がわかりやすい。
世界的に高いリサイクル率を誇るスウェーデンで埋め立てられているゴミは、全体のわずか1%だという。52%はエネルギー利用、47%はリサイクルされ、新たな製品として生まれ変わるのである。さらに、ビン、缶、ペットボトルなどは町中のスーパーなどに設置されているリサイクルボックスに持ち込むことでデポジットがもらえるシステムになっている。 また、スウェーデンではセカンドハンドストアが街の至る所にあり、使われなくなった食器や洋服、マットレスやソファなどの大きな家具、おもちゃ、本まで幅広いものが置かれている。私が暮らす街にはカフェが併設されているものもあり、いかに地域に根付いていることがわかる。
実際、私もセカンドハンドストアでの思わぬ出会いに、食器や花瓶などを購入したことがある。スーパーの帰りがけにふらっと宝探しの旅に出るような気分である。新品で買うよりも手軽にお宝を発掘できるのはなんだか楽しいし、一期一会の出会いのようでついつい買ってしまう。現在味噌汁用(笑)に愛用している群青色の器も誰かに捨てられていたかもしれないが、今こうして私にとって欠かせないものとなっている。
モノの循環について考えた際に、私は断捨離や大掃除で、多くのものをまだ使えるのにもかかわらず捨ててしまっていた。使わなくなったものが、誰かの手に渡りより長く愛される、このシンプルな循環でゴミを減らすことで新資源を投入することも、廃棄の際に資源をつぎ込むことも大幅に削減できる。今私たちが捨てようとしているものは、本当にゴミなのか、今一度問いかけてみる余地はありそうだ。
(Ruka)
ブラックフライデーの功罪
👉Panic In The Aisles: Holiday Shoppers Are Buying Early, Hoarding Items (Forbes)
11月26日。来たるブラックフライデーに向け、街が少し、浮き足立って見えた。オンラインでは、早くも値引き商戦がはじまり、私自身、物価の高いデンマークで買い物を楽しむチャンスとあって、日々ウィンドウショッピングに勤しんでいる。
自粛の反動で高まる「リベンジ消費」を見込む声も大きいが、過剰消費を煽るかのようなセールに、年々非難の声は高まっている。
ブラックフライデーに合わせ、「Don't Buy This Jacket」キャンペーンを展開したパタゴニアの例は記憶に新しいだろう。
そんな中、世界的なサプライチェーンの混乱や、EC利用の普及といった情勢が、ブラックフライデーに暗い影を落としている。
生産の遅れ、コンテナ港の混雑、ドライバー不足といった問題が、ホリデーシーズンの在庫不足を招き、消費者は対応を迫られているという。
顕著なのは、余分に買って、必要無かったら返品するという購買行動だ。発送の遅れに備えて、在庫があるうちに、など背景は様々だが、小売業者による返品規定の緩和が大きい。
もちろん、返品が簡単なのは、いちユーザーとしてありがたい。しかし、消費者による買い溜めが、在庫不足を加速させ、負のループに突入していることも事実だ。
また、環境面でも、返品数の増加は好ましくない傾向だ。輸送に伴う負荷はもちろん、返品された商品(特に季節性のもの)の大半が廃棄され、悪影響を与えているという。
昨年アメリカで返品された商品の総額は4,280億ドル、2019年の3690億ドルから大きく増加している。
EC市場の規模拡大が進む中、私たち自身もネットショッピングとの付き合い方を見つめ直すべきかもしれない。
(Seo)
耳あたりの良い言葉にご用心
👉What Was Fashion Doing at COP26? (The New York Times)
先日のCOP26を受けたファッション業界への取り組みについて、NYTでファッションディレクター/批評家を努める Vanessa Friedman のオピニオンが鋭く、環境アクションへに対する学びが多かったので今回取り上げてご紹介したい。オピニオンは次の5つの項目から提言される。
1. There was plenty of official action.
政府や業界団体が起こしてきた行動は実を結ぶものになっているか。たとえば、ファッション集団によるインスタレーションアートの啓蒙活動。ブロックチェーンを使用した製造履歴のトレースタグ。ポリエステルではなく「環境に優しい材料」を使用するように動機付ける関税。
2. A fake fact was finally abandoned.
「ファッションは地球上で2番目に汚染の多い産業である」という統計の誤認。
3. “Degrowth” is the word of the moment.
「脱成長」がマーケティングバズワードになっていないか。企業はどのように実践してるか。それは環境へのインパクトとファイナンスを両立できるものか。
4. Resale becomes reuse.
消費者に利益のあるリユースの仕組みが作られているか。たとえば「Circulate」のような、ブランドとコンシューマーの間に相互の報酬が得られるようなシステムになっているか。
5. But watch out for “regenerative.”
多くのブランドが再生農業のサポートに投資しているが、本当に良いインパクトを与えているか。定義があいまいな言葉を巧みに使うことでグリーンウォッシングにつながっていないか。
いま私たち消費者がまず行動として起こせるのは、甘いバズワードに惑わされず、政府や企業がどのような行動を起こし、現実的なインパクトを起こしているか注意することなのだ。
(Hikaru)
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